3/18 精霊(しょうりょう)の日

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  万葉集を代表する歌人の柿本人麻呂、女流歌人の和泉式部と小野小町、この3人の忌日が3月18日であると伝えられていることから記念日となっているそうです。参加している百人一首の展示(京都に巡回中)はコロナの影響でお休み中です。精霊もお休みなさっているのでしょうか。

3/11 パンダ発見の日

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3月11日が「311」と略されて9年。この日お誕生日のひとも、結婚記念日のひとも、どこかすこし悲しい日になってしまったわけですが、堂々と「パンダ発見の日」です。でもね、実際発見されたのは「パンダの毛皮」なんだって。複雑なきもちになる日ですね。



 

上田こっぱ旅の日

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 新型コロナウイルス が世界中に広がる前の2月のある日、上田に日帰り旅行に行った。サントミューゼ上田市立美術館でやっている展覧会で「こっぱ人形」を見るためだ。こっぱとは漢字では「木片」または「木っ端」と書く。てのひらサイズの小さな木彫りの人形だ。

 家を出るのが遅かったので着いたのは12時くらいだった。行きたいところを書き出して乗り継ぎを調べると、どこも分刻みでないと回れないことがわかった。ぶらり、なんてのんきな旅ではない。なんだかあせってきたぞ。
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 去年の台風19号の被害で千曲川橋梁が崩落したため、別所線に乗るには城下駅まで代行バスで行き、そこから列車に乗らねばならない。ひとまず別所温泉は後回し。NHK日曜美術館のサイトで見た「尾澤木彫美術館」に先に行こう。上田駅からはしなの鉄道でひと駅だけど本数が少ない。ここはちょっと奮発してタクシーだ。

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 行先を告げるも、運転手さんは不安そうな顔をしている。カーナビはついていない。「あの...、信濃国分寺駅から5分くらいのところにあるらしいんですけど」「降りましょうか?」と言うわたしに「いや...」と答える。そこに無線で呼びかけが入った。「はい、駅から乗客1名、はい、えっと、オザワ彫刻...」後ろから「木彫です!」と声をかける。無線の声が「○○さんの角を曲がって、前に行ったよね○○さんのとこ」と言う。「はい...」とおじさんは小さく答え車を発進させた。うーむ。大丈夫だろうか。「どれくらいかかりますかねえ」「えっと、たぶん1500円くらいだと...」時間を聞いたつもりだったけど、まあいい。「あの...地元の方じゃないんですか〜?」と尋ねると「昨日から独り立ちしまして、道がまだ...」と不安そうに答えた。とっさに手元のスマホでグーグルマップを立ち上げた。



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 「あ!あそこ、看板出てます」「あ、はい。あの...1800円超えてしまいました...。すみません」「いえいえ、どうもありがとうございました」お釣りをもらって降りる。おじさんの前職は「技術関係」らしい。

 「尾澤木彫美術館」は農民美術の第一人者、尾澤千春・敏春父子が制作した木彫作品約1500点を展示する美術館である。新潟から移築したという立派なお家の重たい引き戸を引くが開かない。え?きのう電話して確認したのに...。呼び鈴を鳴らすも応答がない。ワンワンワンワン!番犬が吠えまくっている。その横で車の切り返しにてこずっているタクシー。ブルルンブルルンブルブルガガガ。やだ、あのタクシーでまた上田に戻ることになるのだろうか...。ピンポンピンポンピンポン!

 すーっと戸が開いて、電話のおじさんとはちがう若い男のひとが「きのうお電話くださった方ですか」と言った。暖房の効いていないしーんとした部屋にところせましと並ぶ木彫作品たちを見てまわる。すご〜くすてきな建物!3階への階段は急で屋根裏部屋みたい。いいとこ来ちゃったなあ。そして、ガラスケースにたっぷりのこっぱ人形が!世界の木彫人形も!わ〜わ〜、こころの中で叫びながら写真を撮った。撮影可なのもうれしい。

 

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 もっとゆっくり見たかったなあ、と後ろ髪を引かれながら、信濃国分寺駅まで走ってしなの鉄道に乗り上田に戻る。宿場町の面影を残すノスタルジックな柳町でお昼を食べるのだ。しかし、もう14時になっているではないか。すぐ食べられそうなパン屋さんのカフェにしよう。代々木上原にもあるお店だけど、オーナーが故郷の上田で開いたお店なんだそう。感じのいいお店でスープもおいしい。満足。信州のりんごジュースおいしい!

 

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 道すがら竹風堂で栗あんソフトクリーム(300円)を買う。前に小布施で食べて美味しかったのを思い出したのだ。舐めながら小走りに美術館に向かう。しばらくすると、大きな杉の木の前にどーんと看板が。「農民美術児童自由画100年展」これこれ!これがこの旅のメインなのよ。

 

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 サントミューゼは芝の中庭がどーんとあって広々と、美術館のほかにホールや劇場もある。今回の展覧会のテーマ「農民美術運動」とは 大正8年に版画家・洋画家の山本鼎が主導となって上田で始まった。農民の手からつくられる美術作品が国を豊かにすると提唱し、その後上田地域の伝統的工芸品として定着したのだそうだ。

 大正時代の農民の方々のつくる素朴な作品は、わたし好みのものが多くて、なかでも「こっぱ人形」はすばらしく眺めても眺めても飽きない。できれば、ひとつずつを目の高さでじっくり見たかった。



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 バタバタだけど、上田まで来て別所温泉に寄らずに帰るなんてことは出来ない。16時すぎの代行バスに乗り込む。バスから見ると赤い橋が途切れていた。復旧は2021年の春を目指しているそうだ。地元の方々も別所温泉のみなさんもご不便でしょうが、がんばってください。行きに乗った車両は丸窓電車で、楕円に切り抜かれた早春の景色をぼんやり眺めた。何か俳句になるものないかなあ。

 

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 レトロな駅舎の「別所温泉駅」に17時くらいに着く。降りるひとはまばらで、その方々も旅行鞄を提げている。暮れかかる寂しげな町を歩く。行きたかった喫茶店もパン屋もとっくに閉まっている。北向観音も観音さまは拝めなかった。せめて共同浴場でひとっぷろ浴びなきゃね。「石湯」は22時までやっているらしいので向かう。150円の入浴料を払い、急いで服を脱ぎ、急いで風呂につかり、急いで服を着て、18時くらいの別所線に乗り上田に戻った。すっかり夜である。

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 19時半くらいの新幹線に乗るため街を歩く時間はない。改札横の蕎麦屋で食券を買い「鴨南ばん」をすすり、その向かいのお店であれこれ信州みやげを物色。銘菓はバラ売しているのでいろいろと試せてたのしい。どれもおいしかったけれど、「くるみぼーろ」が味も値段も素朴で気に入った。おすすめしたい。

 

 なんとも慌ただしい半日旅行だったけれど、直に「こっぱ人形」を目にすることができてよかった。人形の持つ素朴さや大らかさが好きだ。どことなくユーモラスな造形をしているけれど、たぶんそんなことは意識せずに無心に彫ったのじゃないかなとおもう。自分の作風を主張していないのもいい。農民の冬は厳しかったかもしれないけれど、暗さがない。それもいい。

 その後、わたしも作ってみたくなって、東急ハンズで木っ端を買ってきてみたけれど、ちっとも進まず...ほったらかしてある。

 

 おわり